第3章 ダイアン・マーチン、汀マリア

(最終更新 2014.12.6)

ダイアン・マーチン Diane Martin 汀マリア Nagisa Maria 1979年 『バトルフィーバーJ』
 ダイアン・マーチン(ミスアメリカ)=桃・初代(1-24話)
  出演 D.マーチン(「D」は「ダイアン」の頭文字)
 汀マリア(ミスアメリカ)=桃・二代目(24-52話)
  出演 萩奈穂美

【設定】
[所属] 日本国防省。
[敵] 秘密結社エゴス。現代の科学を超えた科学を崇拝し、世界を股にかけ暗躍するその犯罪組織はついに日本に上陸する。
[前歴] 〈ダイアン〉FBI秘密捜査官。/〈マリア〉日本国防省の所属だがFBIで捜査官として研修。
[経緯] 〈ダイアン〉エゴスを追って来日し、国防省の最高幹部連続暗殺事件を調査中、バトルフィーバー隊と出会う。そして彼らに加わり、日本にとどまってエゴスと戦うことに。/〈マリア〉ダイアンの妹キャサリンの護衛として来日するが、任務に失敗、責任を感じてバトルフィーバー隊と行動を共にする。その後、正式にダイアンと交代し戦列に加わる。
[能力] FBI捜査官としての技量・経験。
[特技] 〈ダイアン〉ダンス。(バトルフィーバーはダンスを戦いに応用するという設定が途中でうやむやになり、マリアにつていはよく分からなくなっている)
[日常] 専業。
[その他] 〈ダイアン〉父親のボスナーもまたFBIの捜査官であり、事件調査中にエゴスに殺されている。/〈マリア〉国籍はアメリカ。19歳。ボスナー捜査官はFBI時代の恩師。

【解説】
 見せ場があったのは登場回(第1話)と退場回(第24話)のみ。
 何か怪事件が発生すると、調査に出向いてエゴスの陰謀を暴くのは、いつも男の四人の役目。敵の怪人が現れいよいよ倒すという段になって、ようやく変身した姿で現場に現れる。素顔の彼女の姿が見られるのは、みんなで基地でくつろいでいる時だけ。そういうやり方が半年も続く。
 初代ミスアメリカ・ダイアンの出番が異様に少ないのは、演じた人の本職が女優ではなくモデルであり、そっちのほうが忙しかったからである。ではなんでそんな人が起用されたのだろうか、何か裏の事情でもあったのか。ただある意味これは非常に適切なキャスティングであったとも言えるのである。
 バトルフィーバー隊はシリーズ史上随一の、オシャレな雰囲気意を持った戦隊である。パチンコやファッションにうつつをぬかし、怪事件発生の知らせを受けても遊びに夢中になったまま、「そんなもん地元の消防署に任せておけ」と言い放って重い腰を上げない。しかし一旦事件がエゴスの仕業と知れば、たちどころに彼らの目には闘志の光が宿り、直ちに現場に急行する。死をも恐れぬ悲壮な決意を胸に秘めつつ、普段は余裕をかました陽気なヘラヘラした態度。その二面性、これが本戦隊の魅力である。
 ダイアンはアメリカ人である。普通の日本人にとっては、もうそれだけで強そうに見える。モデルだから背も高いし、基地での立ち居振る舞いも堂々としたものである。隊の雰囲気を壊さぬためには、女であっても強そうに見えることが最も大事なことであった。そしてダイアンは出番が少なかったために、本当に強いかどうかを視聴者の前に見せずに済んだのである。
 そんな不自然な体制も半年で終わりを告げる。モデルの仕事がさらに忙しくなったからだが、劇中では自主都合で退任を申し出、アメリカに帰るという話になった。戦隊シリーズではこんな退場の仕方は他に例がない。これもまた彼女のキャラクターにふさわしかった。
 二代目ミスアメリカ・マリアのキャラクターは正反対であった。初登場の第24話は、彼女がまんまとエゴスに出し抜かれ、任務に失敗する場面から事件は始まる。ダイアンとは違って、有能なFBI捜査官という印象は早々に崩れ落ちる。そんな彼女が戦士に任命され、バトルフィーバー隊に入った理由も視聴者に対して十分に説明されなかった。
 それ以降も彼女は、事あるごとにピンチに陥っては、仲間に助けられていた。ただしこれは、彼女がどんな危険にも臆することなく、その中に積極的に飛び込んでいった結果でもある。仲間の四人の男はそんな彼女を妹分としてかわいがり、視聴者もまた彼女のひたむきさを応援した。スタッフとしても力が入っていたのだろう。メイン回が半年だけで四回というのも多い。そしてメイン回以外でも彼女の出番は頻繁にあり、それらの多くは子どもの絡んだ話である。
 マリアのキャラクターを決定づけたのは、恐らく第26話ではなかっただろうか。入院している子供に会いに行って励ましてあげたいと思った。それだけのために彼女は病院に行く。エゴスが網を張っているのを知りながら。子供たちを守りたいという、彼女のやさしさ、純粋さこそが、いかなる危険をも恐れずに敵に立ち向かい、倒されても何度でも立ち上がる勇気を彼女に与えていた。そしてそれはFBI捜査官としての技量なんかよりも、はるかに重要な事であったに違いない。
 そう考えた時、倉間将軍がミスアメリカのバトルスーツを彼女に託した、その真意もおのずと明らかであろう。
 エゴスとの戦いも終盤に入ると熾烈を極め、バトルフィーバーの隊員も前半のように余裕をかましてばかりもいられなくなる。余裕のある大人としてのダイアンから、余裕のない、いつも一生懸命なマリアへの交代は、隊の雰囲気の変化ともうまくマッチして、最終回に向けての盛り上がりに大きく貢献していたといえる。

【メイン回】
上原正三/竹本弘一
24 涙!ダイアン倒る 〔高久/竹本(弘)〕
 護衛のマリアの隙をつき、エゴスはダイアンの妹の誘拐に成功。
26 包帯男の仮面報告 〔曽田/広田〕
 エゴスはバトルフィーバーの正体を探らんと網を張る。
36 爆破された結婚式 〔上原/平山〕
 爆弾犯に仕立てあげられたマリアは警察に追われる。
40 美人先生危機一髪 〔江連/竹本(弘)〕
 マリアは家庭教師に変装して天才少年を護衛する。
47 怪!謀略の草野球 〔曽田/広田〕
 次々と誕生する超能力スポーツ選手の秘密は。

 やや出番の多い回として第29話「見たか!? 口裂け女」〔江連/竹本(弘) 〕。