第4章 桃井あきら

(最終更新 2014.12.11)

桃井あきら Momoi Akira 1980年 『電子戦隊デンジマン』
 桃井あきら(デンジピンク)
  出演 小泉あきら

【設定】
[所属] デンジ犬アイシーによって招集された者たち。アイシーは三千年前にデンジ星が滅ぼされた時、宇宙船で脱出、地球にたどり着き、その後長い眠りについていた。
[敵] ベーダー一族。異次元からの侵略者であり、次なる目標は地球をヘドロの星にすること。三千年前にはデンジ星を滅ぼした。
[前歴] テニスの選手。世界一をめざしていた。
[経緯] 各地で奇怪な事件が続発するなか、あきらもまたテニスの練習中、突然コーチが炎上発火するのを目の当たりにする。続いてしゃべる犬が現れ、彼女を戦士に任命し、デンジランドへと導く。
[能力] デンジ星人の遺伝子。デンジ星が滅ぼされた際、アイシーとは別ルートで地球に逃れた人々がおり、彼らの末裔でデンジ星人としての資質を多くとどめている者が戦士に選ばれたと推測される。
[特技] スポーツで鍛えられた優れた体力。
[日常] アスレチッククラブで水泳等のインストラクター。

【解説】
 第2話であきらは、デンジマンとなることをいったんは断る。
 他の四人にはない深い考えを持っていたからではない。単に物分かりが悪く、地球が今危機に瀕しているということを理解するのに彼女だけ時間がかかっただけの話である。結局は彼女もデンジマンとしての誓いをするが、その後も他の四人に比べて、戦士の自覚を欠いた軽率な行動をとる様子がしばしば見られた。
 女が男に比べて肉体的な面で劣っているのは仕方ないとして、精神的な面でも劣っているというのは、まるで戦隊シリーズ以前のヒロイン像に先祖返りしたかのように思える。
 それまでの戦隊ヒロインはすべて軍人や警察官であった。キャリアも豊富で、身近な人を殺されているなど、危機意識も高い。あきらはシリーズ史上初の、一般人出身の女戦士である。勇ましさや猛々しさとは無縁の、おっとりした上品な性格は、その設定を反映したものであったのだろう(もっともそれを言うのなら、男の四人だって一般人だったぞと言われそうだが)。
 とはいうものの、地球の存亡をかけた戦いの火蓋は既に切って落とされているのである。いつまでたっても一般人気分の、おっとりした女の子であっていいはずがない。
 第18話では、「罠かもしれない」という赤城たちの制止を無視し、勝手な判断で一人現場へと駆けてゆく。危険が待ち構えているということが、分からなかったわけではない。分かっていた上で、あえて彼女は飛び込んでいったのである。そこに自分に助けを求めている人がいたからである。そこには何の躊躇もなかった。
 この回を境に、死をも恐れぬ戦士として彼女がたくましく成長していったかというと、別にそういうわけでもない。戦士としての意識は高くなったり低くなったりして定まらず、結局最後までよく分からないままだった。
 そしてデンジマンの他の四人やアイシーもまた、彼女が一人前の戦士として鍛えられることを、積極的に望んでいるふうにも見えなかった。
 デンジマンは五人もいる。一人くらい戦力にならないものがいたところで、大したことはない、と言われれば確かにその通りである。デンジ星人の血を引く者は、現在地球に五人しかいないわけではないし、彼女を外し、もっと強くてもっとやる気のある男を入れる可能性もありえた。そうしたほうが良かっただろうか?
 デンジランドにはサポートスタッフはいない。全員が男であるよりも、女が一人いたほうが場が華やぐし、うるおいも生まれる。
 といっても、彼女が普段から仲間に対して細やかな気配りを見せていたかと言われれば、特にそういう印象もない。男の四人が実際に彼女から癒やしや励ましを得ていたという描写もない。五人でくつろいでいる時に、コーヒーをいれてくれるのは黄山(イエロー)の役割である。
 女戦士に一体どのような役割を求めるのか、明確な考えが作り手にあったようには思えない。五人全員男であるよりは、一人くらい女がいたほうがよさそうだという、その程度の考えしか持たぬまま、女を入れたりすれば、戦士としても職場の花としても中途半端な存在にしかならないことは、最初から目に見えていた。

【メイン回】
上原正三/竹本弘一
2 人喰いシャボン玉 〔上原/竹本(弘)〕
 戦士になることを断るあきら。説得する四人。
12 危険な子供スパイ 〔上原/竹本(弘)〕
 ベーダーはあきらの生徒のコピーを作って送り込む。
18 南海に咲くロマン 〔曽田/竹本(弘)〕
 人類に紛れて生きる海彦一族を甦らせようとするベーダー。
28 呪いの館の密殺者 〔上原/小林〕
 ベーダーはデンジマンを殺すために呪術師を招聘する。
35 謎のはたおり姫 〔曽田/竹本(弘)〕
 伝統芸の跡継ぎになってくれと頼まれるあきら。
42 少年を喰う悪い夢 〔高久/服部〕
 あきらの生徒の頭に取り憑いたベーダー怪物。
43 謎なぞ七色レディ 〔江連/竹本(弘)〕
 ミスコン会場から優勝者が連れ去られる事件が続発。

 出番の多い回として、第9話「死を呼ぶ怪奇電話」〔上原/竹本(弘)〕。
 第37話「蛮力バンリキ魔王」〔曽田/小林〕もあきらのキャラクターを語る上で重要な回。