第8章 小泉ミカ、矢吹ジュン、桂木ひかる

(最終更新 2015.1.11)

小泉ミカ Koizumi Mika 矢吹ジュン Yabuki Jun 桂木ひかる Katsuragi Hikaru 1984年 『超電子バイオマン』
 小泉ミカ(イエローフォー) 初代(1-10話)
  出演 矢島由紀
 矢吹ジュン(イエローフォー) 二代目(11-51話)
  出演 田中澄子
 桂木ひかる(ピンクファイブ)
  出演 牧野美千子

【設定】
[所属] ピーボ(バイオ星からやってきたロボット)によって集められた、バイオの血を引く者たち。
[敵] 新帝国ギア。狂気の天才科学者が一人で作り上げたメカ人間の帝国。世界征服をめざす。
[前歴] 〈ミカ〉カメラマン。/〈ジュン〉アーチェリーのオリンピック候補選手。/〈ひかる〉不明。
[経緯] 〈ミカ、ひかる〉世界一の科学都市テクノトピア21を訪れていた際、空襲に遭遇。続いて出現した巨大ロボによって、ピーボのもとに運ばれ、戦士に任命される。/〈ジュン〉ミカが戦死して四人になったバイオマンが、ギア相手に苦戦している場に遭遇、そしてバイオの血を引くことが確認され、二代目イエローに。ピーボが地球に来た当初は外国にいたのでセンサーにかからなかったことも判明する。
[能力] バイオ粒子。五百年前に地球に飛来したバイオロボによって、五人の地球人がバイオ粒子を浴びたことがあった。戦士に選ばれたのはその血を受け継ぐ子孫。
[特技] 〈ミカ〉格闘術。/〈ジュン〉アーチェリー。/〈ひかる〉植物に関する知識。
[日常] 専業。
[その他] 〈ミカ〉死んだ兄がいた。/〈ひかる〉作中で「お嬢様」呼ばわりされたことから、良家の子女という設定があったのだろうか。フルートが趣味。

【解説】
 もし一年間小泉ミカのままでやり通せていれば。
 戦隊シリーズ史上最大級の痛恨事であると言う人は多い。
 一つの戦隊に女性が二人も入るなど、当時としては全くの常識破りの出来事であった。そのために作り手の側も、じっくりと時間をかけアイディアを練って、準備を進めていたことであろう。それがたった十話で水の泡である。突貫工事で矢吹ジュンのキャラクターが作られ第11話以降の撮影が続行されたが、ウォーミングアップぬきでいきなり試合に出されるようなものとあっては、特徴を十分に出すこともできなかったし、作り手としても不本意だったろうことは容易に見て取れる。
 いったいヒロイン二人はどのように描き分けられる予定だったのだろうか。
 ミカを演じた役者はJAC所属であり、第2話ではさっそく激しいアクションを披露している。自己主張も強く、自分に厳しく他人にも厳しいという性格は、今までのヒロインには全くないものだった。「女が二人もいては弱くなりすぎる」という懸念を払拭する目的があったことは間違いない。一方ひかるは弱くて頼りなさそうに見えるが、仲間に対する献身性は人一倍。「男らしい女」と「女らしい女」という具合に描き分ける意図があったことは明白である。
 おそらく、男用の席四つ、女用の席一つという基本の枠組みはそのままに、「男用の席に座る女」と「女用の席に座る女」とで描き分ける予定だったのではないか。しかし、果たしてそれでうまくいっていただろうか。
 第15話は記念すべき、戦隊シリーズ史上初のヒロインダブルメイン回である。ただこの話が何か変であることに、勘の鋭い人は気がついたことであろう。これはもともとミカとひかるの話として作られ撮影が進められていたものであり、後からミカの場面をそのまま全部ジュンで撮り直したのである(『東映ヒーローMAX Vol.31』掲載の牧野美千子インタビューなど)。
 この話、冒頭でひかるがミスをする。それを執拗に責め立てるジュン。そのために、ミスを挽回しようと命懸けで頑張ったひかるにより、バイオマンに逆転勝利がもたらされる。いい話ではあるのだが、しかしなぜそこまで責める必要があったのか、不自然さは残る。ひかるを信頼していたからこそジュンは厳しい態度で接していたのだ、という説明が一応ある。だが、いつのまに二人の間だけにそんなに固い絆ができていたのか。同性だからか? しかしそれも女を十把ひとからげにする発想ではないか。
 女だから戦いには向いていない、という考えをジュン(実質はミカ)は断固として拒絶する。そしてそれは、ひかるにも適用されるべきであると考えている。確かにそれは正論に違いない。五人しかいないチームで女が二人いて、一人は男並みに扱われ、一人は女の子だからと特別に扱われるというのは、いくらなんでも不自然に過ぎる。しかしそれは二人とも似たようなポジションを占め、差別化できなくなることを意味する。そもそもミカが強いと言っても「女にしては強い」という程度の意味であり、男並みに強かったわけではない。だいたいミカも第6話でミスをしているが、その際に郷が彼女を厳しく叱ることはなかった。それは、ミカが女であることと無関係だったと言えるのかどうか。
 ミカの代わり入ったジュンは、ミカの性格を受け継いだようにも見える。だが「新入り」という立場である以上、郷に対して対等な口をきけるはずもなく、結局のところリーダーの言うことに素直に従う「女用の席に座る女」に落ち着いた。妙にメイン回が多いのだが、アクションがうまいのを便利屋のように使われていた印象も残る。ちなみにミカと同じく役者はJAC所属である。
 そして早瀬先輩や山守正太、子供たちとの触れ合いを通じて、普通にかわいくて優しい女の子という印象を強くしていく。
 一方のひかるはというと、第14話ではその優しさゆえにブレインと心を通わせ、その結果として郷の指示に異を唱えて自分の判断で行動するような積極性も見せる。戦いの中に身を投じた以上、やさしいだけの女の子でとどまってはいられるはずもなかった。そうしてますます二人のキャラクターは接近する。
 バイオベースでも、二人の役割に違いは見られない。第19話では南原に二人で包帯を巻き、第22話ではエプロンをして二人で朝食を作っている。戦いにおいても二人のコンビ技はやたら豊富。さらに加えて、ダブルメイン回の多さ。いくら本作の目玉とはいえ、四話も作る必要があったのだろうか。そしてそのいずれにおいても、二人の絆が不自然に固いものとされたのは第15話と同様である。そしてそのあおりを受けて、ひかるの単独メイン回はたった二話しか作られず。
 二人の相違性よりも類似性ばかりを強調するような描き方は、女は二人でワンセットという印象さえ招きかねなかった。
 本作の放映が始まった時、女が二人もいることに対して驚きの声が上がったのは、戦いは男の仕事であると思われていたからである。女戦士など例外としてのみ存在が許されるものであると。だからこそ、本作を成功させるためには、従来とは全く異なる画期的なタイプのヒロインを登場させる必要があると誰もが思った。だが、ジュンとひかるの二人とも、適度な強さと適度な優しさを併せ持った、従来型の魅力を持ったキャラクターとなり、そしてそんなヒロインが二人もいることに、何の不自然さもなかった。
 「戦いは男の仕事」などという考えなど、戦隊シリーズは『ゴレンジャー』の時点でとっくに払拭していたのである。そしてそのことに、人々は気づいていなかった。気づかせたのが、『バイオマン』という作品であった。

【メイン回】
曽田博久/堀 長文
2 集合!宿命の戦士 〔曽田/堀〕 Y
 ミカを前にして明かされる、五人が戦士に選ばれた理由。
6 起て!バイオロボ 〔曽田/服部〕 Y
 郷の指示を無視してミカはUFOを追う。
10 さよならイエロー 〔曽田/山田〕 Y
 バイオキラーガンの直撃をくらうミカ。
11 新戦士ジュン登場 〔曽田/山田〕 Y
 新戦士を捜す四人とピーボ。阻止せんとするギア。
13 ジュンよ 〔曽田/堀〕 Y
 オリンピックを捨てたジュンを早瀬は連れ戻そうとする。
14 新頭脳ブレイン! 〔曽田/堀〕 P
 感情が芽生えた人工頭脳、それをひかるはかばう。
15 女戦士炎のちかい 〔鷺山/山田〕 YP
 メカ人間を取り逃がしたひかるを、ジュンは厳しく責める。
16 走れ21599秒 〔曽田/服部〕 Y
 ギアの陽動作戦とは知らず、ジュンはアイコ先生を追う。
21 守れバイオベース 〔鷺山/山田〕 YP
 ギアに操られ、バイオベースへ道案内するひかる。
27 クモ地獄の女戦士 〔鷺山/堀〕 YP
 よそ者を必死で追出そうとする村人に不審を抱く二人。
32 ギアの大改造作戦 〔曽田/山田〕 Y
 無人自動車を追跡中に交通事故を起こしてしまうジュン。
36 変身ボーイ 〔曽田/堀〕 Y
 マグネ戦士にされた正太は、ジュンの前に立ちはだかる。
39 メイスンのわな! 〔山本/山田〕 P
 負傷をおし、超音波の影響をはねのけるフルートを吹くひかる。
41 悪魔の子守り唄! 〔鷺山/服部〕 YP
 少女の夢の中に飛び込むひかる。その生命の危機にジュンは。
45 人間爆弾ジュン! 〔藤井/山田〕 Y
 ギアはジュンのヘアバンドをすり替え時限爆弾を仕込む。

 第35話「6番目の男」〔曽田/堀〕と第36話は前後編なので、一緒に黄メインとすべきか。