強化スーツのデザインの統一度
(最終更新 2014.9.15)
スーツデザインの男女差
| ハイレグ | スカート状の布(脚部との色の違いで分類) | なし |
完全に異なる | 一部異なる | 完全に同じ |
形状に差 | | ジェットマン ハリケンジャー マジレンジャー | | | バイオマン フラッシュマン デカレンジャー |
両方 | | | | | チェンジマン |
配色に差 | | | | | *ゴレンジャー |
なし | ** バトルフィーバー | ダイレンジャー シンケンジャー | *マスクマン *ライブマン デンジマン ターボレンジャー ジュウレンジャー オーレンジャー ガオレンジャー ゴセイジャー | ジャッカー カクレンジャー カーレンジャー メガレンジャー ギンガマン ゴーゴーファイブ タイムレンジャー アバレンジャー ボウケンジャー ゲキレンジャー ゴーオンジャー ゴーカイジャー ゴーバスターズ キョウリュウジャー トッキュウジャー | *ファイブマン ゴーグルファイブ ダイナマン |
サンバルカンは当然この表にはない。
布を足す、もしくは引くことによるデザイン差を横軸に、それ以外のスーツの形状・配色差を縦軸にとる。それ以外の装飾品として、*=耳飾り、**=頭髪。
「集団ヒーロー」というアイディア自体は、マンガやアニメで昔から使われていたものではあるが、戦隊シリーズはその集団ヒーロー物の面白さを最大限に引き出すことに成功した。そのためにいくつか原則を打ち立てたのであるが、その一つに、構成員全員が対等・同格であることにこだわりぬいたことが挙げられる。
強化スーツも、それを反映して全員が同じデザインであることを大原則としている。具体的に言うと、全員が同じ色・形をしている箇所と、全員が異なる色・形をしている箇所、この2種類からしか成り立っていないということである。5人中2人だけ同じデザインをして残りの3人とは異なっている、などということは原則上ありえない。
ただし原則に従わないケースも色々見受けられる。多いのは「リーダー用」と「女用」のデザインである。そこに各作品の個性がかいまみえたりし、本稿ではそれについて考察を加えてみる。
1.秘密戦隊ゴレンジャー(1975)
| マスク中央 | 額の数字 | 後頭部の線 | 手袋・靴 | 胸のV字 |
アカ | 青 | 黄 | 白 | 白 | 黄 |
アオ・キ・ミド | 黒 | 白 | 白 | 黒 | 赤 |
モモ | 赤 | 赤 | 赤 | 白 | 赤 |
ゴレンジャースーツは全身九割以上が単一色。色で区別される戦士というスーパー戦隊シリーズのコンセプトは第一作にして強く打ち出されている。しかし色遣いを細かく見ていくと、「リーダー用」と「女用」の特別デザインもまた存在していたことが分かる。
アカレンジャーのみマスクに縦線が入り、額の数字に翼のマーク、右足に銃、そしてマントの襟が一人だけ大きい。デザインだけを見れば、当初はアカだけが他の四人の戦士に比べて格が上、という描き方をしようという予定もあったのではないかと思われる。結局はそうはならなかったのだが、しかしこのリーダー用デザイン、けっこう後まで続くのである。
モモレンジャーは女用の配色の違いの他に、耳飾りの爆弾がある。女戦士を男と同格と描くか特別な存在と描くか、戦隊シリーズも草創期は方針が揺れていた。それがデザインにも足跡を残している。
2.ジャッカー電撃隊(1977)
マスクはスペードエース(赤)のみ「赤地に青」であるのに対して他の3人は「白地に各個人色」(若干色合いが違ってたりするが)。またハートクイン(桃)のみスカート状の布が腰につく。フレアーなのは史上唯一。
基本的に『ゴレンジャー』の三区分を引き継いでいると言える。
3.バトルフィーバーJ(1979)
| マスク | スーツ1 | スーツ2 | ベルト | バックル | 手袋・靴 |
ジャパン | 赤 | 白 | 赤 | 赤 | 赤 | 赤 |
コサック | 橙 | 橙 | 黒 | 黒 | 橙 | 橙 |
フランス | 青 | 白 | 青 | 青 | 青 | 青 |
ケニア | 黒 | 黒 | 緑 | 黄 | 緑 | 緑 |
アメリカ | 桃 | 桃 | 青 | 白 | 桃 | 青 |
スーツで最も広い面積に使われているのを1、二番目を2とした。デザインに統一性がないので、一言で言い表せないのである。「色で区別される戦士」という戦隊シリーズの基本コンセプトが途切れた唯一の作品であり、ジャパンがレッドの戦士でフランスがブルーの戦士というのも後付けなのである。まあそれでも結構あてはまるわけであるが(ケニアを除いて)。
リーダー用デザインと呼べるものはない。女用と言えるのはハイレグカットとマスクの頭髪であろう。全作品の中で最も男女差の際だったデザインといえる。男たちと「ともに戦う仲間」という意味合いを薄め、女戦士は特殊な存在であるという考えを強く打ち出した作品であり、それがスーツデザインにも色濃く反映されている。
4.電子戦隊デンジマン(1980)
レッドのみ額のメカの周囲に黄色で図形が描かれている。リーダー用デザインの復活である。またピンクにスカートが付く(白の縁取りあり)。本作以降スカートが付く場合はすべてタイトミニ型。
『ゴレンジャー』への回帰を意識した作品であり、それがデザインにも反映されている。
5.太陽戦隊サンバルカン(1981)
レッドのマスクの側面の図形は、リーダー用デザインであろう。基本的に前作を踏襲している。女戦士は存在せず。
6.大戦隊ゴーグルファイブ(1982)
第6作目にして初の、完全統一デザイン登場である(そしてこれが今のところ戦隊史上唯一である)。リーダー用デザイン、女用デザイン同時消滅。
男女同格という方向性が本作では強く打ち出され、女用デザインが廃止されたのもその反映ととらえることができる。リーダーが特別な存在ではないという方針は、シリーズの最初から一貫していたが、遅ればせながらやっとそれがデザイン面にも反映された。
7.科学戦隊ダイナマン(1983)
胸の中央や袖口のラインが、レッド・ブルー・ピンクは黄、ブラックは赤、イエローは黒。
黄というのは、差し色として重宝する色なのである。ただしイエローの戦士が困る。イエローだけアクセントなしにするか、イエローだけ別の色にするかになる。女イエローは前者、男イエローは後者。たまたまなのか、意図してそうしているのか、よくわからないが。
本作では差し色は黄、イエローは黒に変更。しかしそれだけだと、ブラックとイエローの二人の印象が似すぎてしまうので、ブラックも赤に変更したのであろう。
また後頭部のラインは、ブラックのみ銀色。それ以外は黒。
いずれにせよこれは純粋なデザインバランスの問題なので、全戦士を同格扱いにするという基本的な考えは前作から不動と言っていいだろう。そしてそれが維持されたのは、全作品のうち本作と前作の二つのみ。
黒に差し替え | ダイナマン・ターボレンジャー・ジェットマン・カクレンジャー |
そのまま | ファイブマン・カーレンジャー・メガレンジャー |
8.超電子バイオマン(1984)
脚部の付け根の模様が、男女で異なっている。
本作は初の紅二点戦隊であり、番組のコンセプトを「男の子用番組だが女の子も楽しめる」から「男の子・女の子両方のための番組」へとシフトさせようとしていた時期の作品である。
それにしては何故ここでまたスーツに男女差を作る方向に進んだのか。
もともと強化スーツというものは、男用にデザインされたものであり、それに布を加えたり除いたりすることによって女が着てもおかしくないものにする、という考えでやってきた。ここで発想を転換させ、男には男用に、女には女用にデザインされたスーツを着用させることにより、より「男女両用の番組」というコンセプトを視聴者に強く打ち出せると考えたのではないだろうか。
9.電撃戦隊チェンジマン(1985)
前作同様、脚部の模様に男女差。
色遣いも男女に差がある。男3人はマスクの後部やゴーグルの縁にアクセントとしての黄が使われているのに対し、マーメイド(白)は桃、フェニックス(桃)は白。
今回ホワイトの戦士が登場するが、これもまた問題がある。スーツは「共通色+個人色」で構成されるのが原則であるが、共通色で最も多く使われるのが白なのである。だからこの原則に従ってホワイトの戦士をデザインすると、全身ほぼ真っ白のスーツになってしまう。
そのためホワイトの戦士は桃色をアクセントに使うことが多い。マーメイドも桃のラインを採用している。それが女二人のスーツの印象をさらに近づけ、男女差を際だたせる結果にもなった。
10.超新星フラッシュマン(1986)
脚部の模様の男女差は、ほぼ前作と同じ。
しかしこの、男女で模様だけを変えるという路線は三年で幕を閉じ、以後二度と復活していない。結局のところ女の子に似合うデザインのスーツをと考えた場合、脚の付け根に線を引くしかなく、それが妙にセクシーになって、男女差を必要以上に際立たせることになったのが良くなかったのだろうか。
11.光戦隊マスクマン(1987)
女だけ耳飾りとスカート付き(縁取りあり)。
男用のスーツに「何かを付け加える」という路線に復帰。
12.超獣戦隊ライブマン(1988)
女だけ耳飾りとスカート付き(縁取りあり)。本作で再び紅一点に戻る。
レッドファルコンのみマスクに大きく黄色が使われている。リーダー用デザインの復活と呼べるのかどうか微妙。
イエローライオンのみ胸の動物マークの色数が多い。黄地に白で絵を描いても見えにくいからであろう。
13.高速戦隊ターボレンジャー(1989)
女だけスカート付き(縁取りあり)。
胸のTマークの縁取りに黄色アクセント。イエローのみ黒。
14.地球戦隊ファイブマン(1990)
久しぶりにスカート廃止。男女差は耳飾りのみ。
男である、女であるよりも「きょうだいである」ことを前面に押し出し、紅二点へと再挑戦した本作は、『バイオマン』の時とは逆に、今度はスーツの男女差を縮める方向へと進む。
胸のVマークに黄色アクセント。イエローはそのまま黄を使っている。
15.鳥人戦隊ジェットマン(1991)
スカート復活(縁取りあり)、ただし腰〜脚の付け根の部分の模様にも差。おかげで、スカートの色と脚部の色を史上初めて違えさせることができ、それがいかにも「スカート」という雰囲気を出す(もっともそのおかげで男用のスーツがブリーフを連想させるようなデザインになってしまったなどと言われることにもなった)。
前作とはうってかわって、男である、女であることを前面に押し出す作風で紅二点を継続。
脚や胴体側面に共通色として白が使われているが、ホワイトスワンのみ桃(ただし手袋のみ白で共通)。名前に反してほとんどピンクの戦士である。
またアクセントの黄が使われている部分は、イエローオウルのみ黒。
マスクの側面で、白が使われている部分があるのだが、ここがスワンが桃なのはいいとして、レッドホークだけ黄。リーダー用デザインというのはリーダーだけデザインが複雑なことを言うのであるが、配色だけ違うこれをそう呼んでいいのかどうか。
16.恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)
女だけスカート付き(縁取りあり)。
『ファイブマン』『ジェットマン』両路線とも引き継がず、紅一点に戻る。「女であること」を殊更に否定するでもなければ強調するでもない無難なスカート路線がこれから十年間も続く。
別にスタッフが関心を失ったということではないのだろう。戦隊シリーズの黎明期にあった「戦いは本来は男の仕事」という社会通念はもはや力を失い、「いるのが当たり前」になったヒロインは、その存在意義について以前ほど厳しく問われなくなったがゆえに、デザインも工夫が見られなくなったということは言えるかもしれない。
17.五星戦隊ダイレンジャー(1993)
女だけスカート付き。脚部と色が異なっているが、スカートというよりは道着の裾をイメージしたものであろう。
18.忍者戦隊カクレンジャー(1994)
女だけスカート付き。縁取りなしは『ジャッカー』以来。色が脚部と同じでタイトミニ型だと、遠目にはほとんど男女同型に見え、これが以降の主流になっていく。
胸の三角形にアクセントの黄が使われている関係上、イエローのみそこが黒。またベルトも他全員が金色なのに対してイエローのみ黒。
左胸のマークに黒が使われている関係上、ブラックのみそこが白。
ホワイトの戦士が桃を一切使わないというのも珍しい。
19.超力戦隊オーレンジャー(1995)
紅二点復活。スカートの縁取りも復活。金色なものだから、ピンクは目立つがイエローは目立たない。
20.激走戦隊カーレンジャー(1996)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
アクセントの黄が使われているが、イエローもまた黄を使っている。
21.電磁戦隊メガレンジャー(1997)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
アクセントの黄が使われているが、イエローもまた黄を使っている。
22.星獣戦隊ギンガマン(1998)
再び紅一点に。女だけスカート付き(縁取りなし)。
23.救急戦隊ゴーゴーファイブ(1999)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
24.未来戦隊タイムレンジャー(2000)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
25.百獣戦隊ガオレンジャー(2001)
女だけスカート付き。久しぶりに縁取りが付く。
首周りとスカートの縁取りの桃色ラインは女用デザインととるか「ホワイト戦士の桃色アクセント」ととるか微妙なところではある。
26.忍風戦隊ハリケンジャー(2002)
スカート(縁取りなし)が付いた上に、脚部がもろに網タイツをイメージしたデザイン(いや本当は鎖帷子イメージなんだろうけど)。ミスアメリカ並みとは言わないが、それに次ぐくらいの大胆さ。
では、本編におけるブルーの扱いが、ともに戦う仲間という面が希薄でお色気要員であったかと言われると、そういうことは全然ない。
本作からまたスーツデザインに幅が出てくる。とはいうものの、男と女は同格か、などということはもはや議論にすらない。スーツデザインは単にスーツデザインという意味しかなくなっていく。
27.爆竜戦隊アバレンジャー(2003)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
28.特捜戦隊デカレンジャー(2004)
スーツはほぼ男女同型だが、マスクのゴーグルのすぐ上にある黒い部分が、女二人だけ短い(おそらく顔つきを優しく見えさせるための配慮)。
7年ぶりの紅二点と騒がれた本作だが、『ファイブマン』以来14年ぶりとなるスカートなしスーツでもあったわけである。『ファイブマン』もまた紅二点復活作品であったが、ヒロインを増員する際にはデザインの男女差は小さくすべしという決まりでもあるのだろうか。
29.魔法戦隊マジレンジャー(2005)
脚部は白の無地で、スカート付き(縁取りなし)。パターンとしては『ハリケンジャー』と同じだが、『ハリケンジャー』ほどの大胆さもない。脚部の無地の部分が防御力が弱そうに見えるのはいいのだろうか。
30.轟轟戦隊ボウケンジャー(2006)
女だけスカート付き(縁取りなし)。以後は完全に単純なスカート路線。
31.獣拳戦隊ゲキレンジャー(2007)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
32.炎神戦隊ゴーオンジャー(2008)
女はスカート付き(縁取りなし)。レッドのマスクに黄色が使われて一色多いが、リーダー用デザインというほどのものかどうか。
目を引くのは、腰・腕・脚についている模様がレッド・ブルー・イエローはタイヤをイメージしたものであるのに対し、グリーン・ブラックだけ斜歯歯車になっていることである。グリーンとブラックは加入が遅かったというだけで、原メンバーの三人と同格の戦士のはず、にもかかわらずこのようなデザインの違いがあるというのは他に例がない。
33.侍戦隊シンケンジャー(2009)
女だけスカート付き。腰部側面の三角形も含めて、男女で完全に共通色・個人色が逆。その三角形、女のほうが若干小さいのは、女用というよりは、バランス上の問題か。
34.天装戦隊ゴセイジャー(2010)
女だけスカート付き。縁取りがあるのは久しぶり。
35.海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
36.特命戦隊ゴーバスターズ(2012)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
37.獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
アクセントの黄が使われているが、イエローの戦士がいないので問題ない。
38.烈車戦隊トッキュウジャー(2014)
女だけスカート付き(縁取りなし)。
1号だけ「1」の字が大きいが、単なるバランス上の問題とも思えるし、リーダー用デザインと言っていいのかどうか。