第二部(第16話〜第33話)

(最終更新 2007.2.16)

 ミキが戦士として大きく成長した時期である。
 仲間とともに経験をつんでいくにしたがって、小柄な体にたくわえられる大きな力。スーツに頼らない戦いも見せる。一般の人々に対する彼女の立ち居振る舞いも頼もしさを感じさせるようになるのは、戦士としての自信のあらわれか。
 人々を守りたいという彼女のやさしく清らかな心が、それだけの力を彼女に与え始めていたということを感じさせる。
 夏服はうすいピンクの上下にベルトや胸の一部に青を使用。ブーツにハート形のくりぬき。
 第18話以降は髪を二ヶ所で結ぶ髪型に変更。また第22話で肩にかかるかかからないかというほどに短く切りそろえられる。

16 レッド!危機一髪

 デスマルク大元帥の初陣。大勢の人間が注視しているところでゴーグルファイブに失敗をさせ、人間どもに大きな絶望感を味わわせようという作戦の巧妙さは、これまでとは一味違うと思わせる。
 ヒトデモズーとヒトデ軍団の手に落ち、いっさいの都市機能が停止する海城市。ゴーグルファイブのあらゆる武器とマシンもまた無効化される。こんな絶望的な状況下、命が危機にさらされている一人の子供の存在が5人に知らされる。助けられるのはゴーグルファイブだけであると。
 なんでこんな時に……と躊躇を感じないわけでもなかったが、ミキは「見捨てるわけにはいかないわ」と何のためらいもなく言う。選択の余地はなかった。成功したとしても、たった一人の子供の命が助かるだけ。もし失敗すれば、デスマルクの思惑通り、人類は大きなダメージを負う。だがすべては承知の上。血液を運ぶために5人は走る。
 もっともその精神的な強さとは裏腹に、血液を運ぶ途上では一番先に敵にやられたピンクではあったが。
 「おお、ゴーグルファイブだ!」「ゴーグルファイブが来たぞ!」と歓呼の声を上げる海城市民、また「みなさんもくじけないで!」と訴えるブラックの様子など、ヒーローと一般市民との間の信頼の絆が描かれる。それは、たった一人の命も見捨てることはできないというヒーローの姿勢があってこそのものであっただろう。結局選択の余地は最初からなかったのである。

17 カッパ少年の涙

 人間に対する怨念がデスダークによって利用されるエピソードは3回作られたが、その第1弾(残りは第22話、第35話)。
 かつて狩りを行ないカッパを絶滅させた人類。サトル少年はその子孫。滅ぼされたカッパの人間に対する怨念を利用しようとしたデスダークだが、カッパとの友情を信じるサトル少年の懸命の叫びと、それ守らんとする赤間たちの活躍によって、人間をカッパ人間にする作戦はついえさる。
 今回はピンクがまったくの足手まといでしかないという珍しい回。第11話や第15話にもその傾向はあったが、これほどではなかった。マダラマンごときに手も足も出せず、体をつかまれ水中に引きずり込まれるや、ぶざまにもがき苦しむだけ。敏捷さが彼女にとっての唯一の武器であるだけに、動きがにぶくなる水の中にあっては何も出来ないということを思い知らされる。助けたのはやはりブラック。しかし陸の上でもカッパモズーの首しめになすすべなし。
 事件解決後、サトル少年とゴーグルファイブの男たちがプールで楽しく泳ぐなか、ミキだけはプールサイドでみんなに「がんばって!」と声援を送るだけ。単に彼女だけ泳げなかっただけなのかもしれないし、あるいはひょっとして水中戦で痛めつけられた記憶がよみがえって足がすくんでしまったのかもしれない。いずれにせよ、一人蚊帳の外にもかかわらず、彼女の屈託のない明るい笑顔はいつもと何の変わりもない。こわい思いをしたサトル少年を励まし、また他の男性メンバーに心配をかけさせまいとするためにも、無理をしてでも明るい笑顔を絶やしてはならないということは、彼女自身が最もよく知っていたことに違いなかった。
 ピンクのワンピースという子供っぽい水着は、幼さを残した彼女の魅力を引き立たせていた。

18 大人が消える日

 若返りの薬を発明する高田博士、だがその成果はデスダークの狙うところになる。
 誘拐され調合法を渡せと脅迫され、頑として拒む高田博士だが、「娘がどうなってもいいのか」と脅されるや一転言いなりに。また愛犬を犠牲にして自分と自分の娘だけ助かろうとするなど、暗黒科学の前にあっては科学者の良心など何の役にも立たないことが示される。
 事件解決後、高田博士は調合法を惜しげもなく焼却してしまう。「人間は自然のままに年をとるのが一番なんです」。発達しすぎた科学が人間を不幸にするという、本作のテーマが明確に現れた一編。
 でももったいない……と複雑な感情がよぎらないでもない終わり方だが、平和を取り戻した親子と愛犬の様子を見て何の屈託もない明るい笑顔を見せるミキを見ていると、それでもいいかという気にさせられる。

19 お化け屋敷の秘密

 お化け屋敷との噂のたつ廃屋。しかし実態はデスダークのバットウィルス生産工場だった。そのような噂を立てることによって人が立ち寄らなくなるように仕向けていたのである。だが度胸試しに立ち寄る人間によって、結局たくらみは露見する。
 「お化けなんて、いやあねえ」と、お化けをこわがったりするような女の子らしい面を見せるミキ、と言いたいところだが、……普段から何をもおそれることなく勇敢に戦いの中にとびこんでいく彼女にしてみれば、どうもあまり似合うセリフではなかったのではないか。

20 死の花毒サボテン

 人間を養分として繁殖する毒サボテンの恐怖。それに対抗するために未来科学研究所は、メキシコからサボテンの研究者を親善大使に偽装させて呼び寄せる。
 多少わかりにくいが、マズルカによって偽装が見破られてしまったのはミキの失態だろう。子供が困っているのを見たら声をかけずにはおられなかったのであろうが。
 薬を作る場面では、テレサたちの作業をただ見つめることしかできない。科学の知識なんか何も持っていない彼女には、自分が役に立てることなんて何もないことは分かっていた、だけどそれでも何とか役に立ちたい。そんな思いが彼女を何時間も立ちっぱなしにさせていたのであろう。
 今回はやさしいばかりで全然役に立っていなかった彼女だが、しかしだがサボテンモズーとの戦いでは一転大活躍。ラテンのリズムで攻撃してくる強敵に、手も足も出ない男4人。そこにピンクハート催眠。戦いの最中であるというのに突然フラメンコの踊りを始めるミキ。悩殺され、頼りない足取りで「テキーラちょうだい」と近寄ってくるサボテンモズーに、「甘ったれるな!」、彼女の肘打ちが炸裂した。

21 恐怖!魚が化石に

 魚が突然石になってしまうという怪事件を追うゴーグルファイブは、正太少年の父親がデスダークに誘拐されている事実をつきとめる。
 五人の変身前アクションが、もっとも長尺で見られる回である。
 赤間や黒田などに比べて彼女の非力さは隠せず、かといって五人で戦っているのにミキに対してだけマダラマンが手加減してくれるはずもなし。パワーに劣るのを補ってくれるのは、身の軽さを利用した戦法、合気道的な投げ技、そして何よりも彼女の「必死さ」ではなかったか。絶叫のようなかけ声とともに彼女が渾身の力を込めて繰り出すハイキックは、他の仲間の男たちの戦いと比べても決して見劣りする物ではない。
 別にやられそうになっているわけでもないのに、わざわざミキのそばにきて戦う黒田。
 海に突き落とされ、ずぶぬれの姿で海からはい上がるミキの姿もまた、必死に戦う傷だらけの女戦士という印象を強めていた。

22 呪い人形の攻撃!

 人間に対する怨念を利用した作戦第2弾。
 いちおう戦隊恒例「七変化」に分類される回ではあるが、必然性もないのに衣装をとっかえひっかえするようなこともなく、服も4パターンにとどまった(日本人形・ピエロ・フランス人形・王子様)。
 クジャクモズーの矢を受けた人形は、人間を呪い、街を襲い始める。ミキは自分も人形に変装して彼らに接触をはかろうとするが、そのような極めて危険度の高い任務を志願する彼女に悲壮さは微塵もなく、普段の明るい笑顔そのまま。戦士として成長し、自信をつけたということの現れなのだろうか。「こりゃ、女の子ならではの、なかなかおもしろい作戦だぜ!」とはしゃぐ黒田をはじめとして、他のメンバーも全然彼女のことを心配していない(変装なんて男でもするし、別に「女の子ならでは」でもないと思うが)。
 人形の回収に成功し、最初のうちは手柄を立てて喜んでいたミキだが、やがて彼らの悲しい心に接してしまう。そして最後まで心を閉ざしていたフランス人形の心にやっとたどりついたとき、ミキとフランス人形は機関銃に囲まれていた。フランス人形はミキをかばって倒れ、人形たちの心を利用したデスダークに、ミキの怒りが炸裂する。
 ピンクとクジャクモズーとが一騎打ちをくりひろげる場面で、ピンクがやられそうになっていても他の4人が加勢しようとせず見ていただけだったのは、そんな彼女の気持ちをくんだからか。
 クジャクモズーを倒した後、人形をきれいに洗って飾り、彼らの恨みの心がいやされることをミキは祈って戦いは幕を閉じる。
 ミキのプライベートが描かれた唯一の回としても重要である。アロハシャツと赤いハイヒール、頭頂部に編みこみのある髪型は今回唯一のもの。もっとも未来科学研究所のスタッフとの付き合いであり、買い物とはいっても餞別の品であって自分のためのものではなく、全くのプライベートとも言えない。とはいうものの、地球の平和を守るための戦いのために普段すべてを犠牲にしている彼女でも、たまには任務のことは忘れて女の子らしくおしゃれをしてショッピングを楽しみたいという面も持ってはいるのかなあと、そんな感想を抱かせるシーンではあった。そんなささやかな楽しみすらデスダークに台無しにされたあげく、ハイヒールを履いた足では動きも鈍い。フランス人形になすすべなく痛めつけられた女戦士は、つかの間の安らぎすら自分には許されないことを、思い知らされたのだろうか。
 力一杯笑ったり、力一杯怒ったりする表情が彼女の魅力ではあるが、泣いた顔は今回が唯一。まあ、もうちょっと演技力があれば、という気がしなくもない。

23 シャボン玉大作戦

 浄水場を汚染し、水不足に陥れようとするデスダーク。いわれなき非難を受ける浄水場の管理者。息子の源太少年も友達からいじめられるが、父親を信じる。だが、デスダークの作戦が進むにつれ、それも揺れる。
 青山の活躍もあり、ゴーグルファイブがカニモズーを倒してデスダークの作戦はついえたが、美しい自然を守るための戦いは、源太の父親のような人々に委ねられていると語られたところで話は終わる。そして以前にも増して深まる父子の絆。

24 見えない敵を倒せ

 保護色の機能を持つカメレオンモズーを使ってデスダークは金塊強奪事件を起こす。ワタル少年はそれを写真に撮り、正体を暴いてしまったがゆえにデスダークに狙われる。子供に変な薬を飲ませカメレオン人間にした上、家族も同じ目にあわせてやるぞと脅し、強盗事件を手伝わせようとする今回のデスダークはひどすぎ。
 色彩を自由にあやつるカメレオンモズーの力が神秘的。映像合成がおもしろい。

25 恐竜は悪魔の使者

 絶滅したはずの翼竜の卵を発見したデスダークは、それを大量に孵化させて街を襲わせる作戦を立てる。それを目撃したヒロシ少年は、赤間にアジトの場所を案内せねばと、重傷を負った体で立ち上がろうとする。
 最後、恐竜の卵が全部破壊される場面はいささか切ない感じもするが、仕方のないことであろう。

26 ブラック!大逆転

 黒田のすさまじいアクションを披露するため、変身不能になる話は合計3回作られたが、その第一弾(残りは第29話、第42話)。
 イノシシモズーのショック爆弾は人間を記憶喪失にする作用があり、街は大混乱に陥った。黒田もまたショック爆弾で変身不能状態におちいる。この機をのがすまいと必死に追いかけるデスギラーの部隊に対して、あらゆる限りの体術を駆使して戦う黒田。
 目の前に母親がいるにもかかわらず、「ママー、どこにいるのー」とつぶやきながら雑踏をさまよう女の子の姿は哀切さを誘う。
 また、冒頭とラストでの警官と泥棒のベタベタのやりとりもおかしい。

27 人間ジャングル!

 人が消されたり町が破壊されたりするのも確かに恐ろしいが、デスダークの陰謀によって、人と人との絆が断たれるのは、ある意味それ以上に恐ろしいとも言える。
 ゴーグルファイブがモズーを倒せば、被害は自動的に回復することが多いが、人と人との信頼関係は、そうはいかないからだ。
 写生の授業の最中に生徒が3人姿を消してしまう。スイカモズーの仕業だったのだが、学校や父兄は担任の先生一人に管理責任を押しつけ、彼女は職を追われてしまう。だが彼女を慕う生徒たちの熱いがあればこそ、ゴーグルファイブがスイカモズーを倒した後、彼女は職に復帰することができたといえる。
 デスギラーとマズルカが自らの失敗の責任問題を恐れ、内々に処理しようとした結果まんまと赤間の知略にひっかかり作戦が失敗したのとは対照的であった。

28 甦った亡霊モズー

 再生怪人編。
 仲間の死を悼みサメザメと涙を流すサメモズー、という駄洒落ではあるが、そのように仲間の無念を思って涙を流すような「やさしい心」を持つような怪人を作ることさえデスダークにとっては造作のないことであり、その涙を利用して破壊活動を行なうことさえできるという、暗黒科学の恐ろしさ。洋子と和男の姉弟は、その涙を見てサメモズーをやさしい人だと思いこみ、ゴーグルファイブからかくまおうとさえした。
 ミキの変身前アクションも、すっかり板についている。

29 眠りの街の恐怖

 黒田アクション編第2弾。今回はブレスレットを破壊されて変身不能状態になる。走行中のトラックの上での大立ち回りなど、危険なアクションが満載。使命を果たして力尽き、死を待つ黒田のおびえた表情など他にも見どころ多し。
 二人の少年が家に戻らないことから事件を感じる黒田とミキだが、黒田は単身危地に乗り込み、ミキはその間鳩小屋を調べに行く。
 いつも真っ先に危険の中に飛び込んでいく彼女にしてみれば、珍しいシーンではある。五人の中で抜群に身体能力にすぐれた黒田であればこそ、彼に「俺は一人で行くから、ミキは鳩小屋を調べておいてくれ」と言われたら、彼女としても一緒に行くとは言えなかっただろう。

30 猪苗代の黄金魔剣

 会津一鉄流に代々伝えられてきた黄金魔剣。あれはもともと自分たちのものだったと主張し奪いに来るデスダーク。それに対抗するために、当主鈴木一鉄はゴーグルファイブの誰かを孫娘の美潮を結婚させ跡継ぎにしようと画策する。
 美潮のボーイフレンドである清作が恋の行方に悩む様子に目を細めるミキの態度はまるで保護者のようである。実際彼らを守る戦士なのだから、保護者には違いないのだけれども、ミキの立ち居振る舞いにも初期と違って落ち着いた自信のようなものが感じられるようになる。
 デスダークに捕らえられた一鉄と美潮を発見すべく、ミキは赤間と行動をともにするが、大股で走る赤間に遅れまいと、苦しく息をはきながら必死で走るミキ。体格という点で大きなハンデを持っているものの、決して弱音をはくことのない彼女の強靱な精神力が、彼女を戦士たらしめているのだと感じさせる瞬間ではあった。もちろん赤間は彼女に配慮して歩をゆるめるどころか、振り返ろうとすらしないのは普段通り。
 伝統を守ることに執着し、若者の自由を認めぬ頑固老人の一鉄が、最後には折れ、大事に守っていた魔剣を自らの手で廃棄するところで会津ロケ編は終わる。
 ミキの天狗姿あり。

31 ブルー!大突撃!

 第23話に引き続き、いじめられる子供となぜか相性の良い青山。
 敵地に乗り込みさらわれていた子供たちを救出、ガラガラヘビモズーとも互角の戦いをするなど、申し分のない活躍。しかしなぜかヒーローとしての青山の印象は薄い。
 それより、浩太少年に「僕も青山さんみたいになりたい」と言われたシーンのほうが印象に残る。視聴者である子供たちにとっても同じ感覚だったのだろう。「僕も将来ゴーグルファイブに入りたい」とは思ったとしても、赤間や黒田にはとうていなれそうにないから。
 とはいうものの、本当になれるわけではないが。浩太少年が勇気をふりしぼってモズーに向けて投げた石は、ダメージを与えたわけでもないし、事件解決に貢献したわけでもない。しかしその勇気は、彼が今後も強く生きていくのに役に立つだろう。

32 ドキッ骨抜き人間

 警察官をやめて守衛になってから、息子の太郎から軽蔑される日々を送っていた大川だが、ヤドカリモズーをやっつけるべく奮闘する勇姿を息子に見られたため、父子の絆は取り戻される。もっともモズーに対して大したダメージを与えることができたわけでもなく、最後はレッドに助けられるなど、全然役に立ってない。しかしそんなことは問題ではない。
 上司に叱責される父親を、こっそりのぞき見する息子という、かなり切ない構図も出てくる。
 「ピンク旋風ガス返し」という、敵のガス攻撃をはねかえすワザが今回限りだったのは、男4人がピンクの体を回転して盾にするという、あまりにも彼女一人に過重な負担を押しつけるものだったからか。

33 シーザー大爆破?!

 小学生の由美はある日下校の途中に謎のインド人と出会い、「天の腕輪」を託される。それはパルジャ国の国宝であり、自分は王女だということも知る。そしてその腕輪をめぐるデスダークとゴーグルファイブとの争奪戦に巻き込まれることに。
 冒頭でトラモズーに襲われている人を助けようとして、ミキはトラモズーと大格闘を展開、もうすっかり戦士として成長した彼女の勇姿を見ることができる。
 ゴーグルファイブが敵と遭遇してもすぐさま変身しないのは、そうする必要がないからだ。素手でも相応の戦闘能力を持っていなくては話にならないからだ。そして彼女もまた、パワーはなくとも素早い動きで敵を翻弄し、男性陣に劣らぬ戦闘能力を持っていることを、ここであらためて見せつける。
 それでもモズー相手に苦戦は免れず、やがて駆けつけてきた仲間の4人に対してミキは言う。
 「レッド! おじいさんをお願い!」
 そして「わかった!」と言うレッド。大の男が4人がかりで襲われていた人を介抱し、安全な場所へと移動させる、そしてその間にミキはモズーとたった一人で戦い続ける。5人ともそれを当然のことであるかのように行動するさまが描かれていたが、しかしこれは、それまでの男と女の役割を、完全に逆にしたものではなかったか。
 ミキは由美に接触し、何の小細工もなく事実をありのまま話して協力を求める。しかし自分が王家の血筋を引いているという事実にすっかり舞い上がってしまった由美によってそれは手ひどく拒絶される。そして細工を弄して近づいたマズルカにまんまと出し抜かれ、腕輪は奪われてしまうことに。ミキにとっても大変な失態。しかし動揺しつつも、「腕輪は必ず取り返すわ!」と由美に力強く宣言するのは、序盤のミキでは考えられないことだった。責任を感じてすっかりしょげてる由美に対して、ミキは屈託のない笑顔を見せてはげまし、そして真心を取り戻した由美によってトラモズー攻略のヒントが引き出される。
 そして再び戦場に。腕輪をはめて不死身の力を身につけたトラモズーに対してピンクは必死に食い下がり、痛めつけられながらもついには腕輪を奪い返すことに成功する。ゴーグルシーザー爆破寸前という最大級のピンチを、ピンク一人で救ったといっても過言ではない大活躍だった。
 ミキの戦士としての成長は、ここで完成を見る。
 ラストに由美はパルジャ国に王女として旅立つが、それはデスダークの攻撃によって壊滅的な被害を受けた国の再建のため。小学生の女の子が「王女」と聞いて漠然と抱くロマンチックなイメージとはほど遠い、苦難に満ちた旅になることを、由美もまた分かっていて、それであえて行くのであろう、ということを示唆する終わり方であった。