戦隊シリーズにおける戦士の役割分担(実践編)
―― 集団ヒーロー物・各論
(最終更新 2014.9.19)
理論編で展開した役割分担理論を、歴代の戦隊に当てはめてみた。
なお、9.までは男は姓・女は名で、それ以降は男も女も名で表したのは、当時の慣習に従った結果。
25作目までの合計。
役割移行・兼任は一律0.5として計算。
1.秘密戦隊ゴレンジャー(1975)

途中から入った熊野は予備隊あがりの新米隊員で、メンバーの中では最も未熟だが、もともとが大岩のピンチヒッターであり、また体が大きい人間はそれだけでなんとなく大丈夫そうなイメージがする。結果的に無難に大岩の穴を埋めた格好。
2.ジャッカー電撃隊(1977)

第一次テコ入れで大地の性格が唐突に変更される。〈緊〉と〈弛〉の両方を経験した男性キャラは史上一人だけ。第二次テコ入れ(ビッグワン加入)以降は集団ヒーロー物ですらなくなってしまったので、省略。
3.バトルフィーバーJ(1979)

ダイアンは〈外〉と言ってもいいくらいの立ち位置で、序盤は志田と二人して遊びほうけている印象が強烈。そのダイアンは早々に出番をなくし、志田は次第に任務に対して真面目という面を色濃くしていく。そこにアメリカ・コサックの交代。
4.電子戦隊デンジマン(1980)

青梅がサブリーダーとムードメーカーを兼任。おかげで〈緊〉にしわよせが来た感じであるが、黄山が純情朴訥、緑川が直情径行といったふうに性格の描き分けはなされていた。
5.太陽戦隊サンバルカン(1981)

実際は長官の存在感が圧倒的で、そのおかげで三人の関係性はほとんど描かれることがなかったのだが、一応このように分けてみた。
6.大戦隊ゴーグルファイブ(1982)

原点回帰。ただし『ゴレンジャー』に比べて色が少し違う。ブラックが主要カラーに入ったことは、ブルーのイメージをガラリと変えることになる。
7.科学戦隊ダイナマン(1983)

『デンジマン』の青梅もそうだが、二年も続けて演ると、ポジションも一つだけでは満足できなくなるらしい。星川がサブリーダーに加えて三枚目役にまで手を伸ばしてしまい、おかげで南郷が侵食の被害にあっていた。
8.超電子バイオマン(1984)

初の紅二点。ただそれも女エリアが二人に増えただけの結果に。これはもちろん不幸な交代劇の結果であるが、ミカが一年通してやっていたら、二人の描き分けはどのようなものになっただろうか。そして高杉が〈準〉の穴埋めに回される。
9.電撃戦隊チェンジマン(1985)

どうやったら女二人を描き分けられるのか、苦闘は続く。意外なようだが、当初は女らしいのは麻衣の方だった。「影のリーダー」のさやかは、人間的に成長した結果として女エリア入りして〈準〉を疾風に明け渡す。
10.超新星フラッシュマン(1986)

各人の個性の違いがあまり目立たないのは、全員が共通して背負っている運命があまりにもドラマチックであったからである。ジンが年長者としてリーダーらしく振る舞う機会が多少あったくらい。チーム内の対立や葛藤が描かれず、その割には作品自体のドラマ性は極めて高いという稀有な例。
11.光戦隊マスクマン(1987)

タケル一人が特に重いドラマを背負ってしまったがゆえに、これまたチーム内の関係性が希薄。「可憐さ」のポジションを男が占め、女のほうが目立たなくなってしまうというのも極めて珍しい。しかも、女は二人もいるというのに。
12.超獣戦隊ライブマン(1988)

後輩が加入したことが、先発の三人のポジションにも変更を迫る。ただ、それ以前のめぐみの役割が安泰だったというわけでもない。当初は勇介と丈の二人の尻を叩く優等生役ではあったが、女が一人だとどうしても女らしさを求められることになる。
13.高速戦隊ターボレンジャー(1989)

久しぶりの男四人女一人の戦隊ということで、試行錯誤が長らく続いていた戦隊シリーズも安定感を取り戻す。ただしブルー・イエローのイメージに変化。
14.地球戦隊ファイブマン(1990)

女二人の描き分けが可能になったのは、この作品が初ではないだろうか。二人とも女エリアにとどまりながら、片方が母寄り、片方が娘寄りと役割を分けあうことに成功。それが可能になったのは、きょうだいという特殊な人間関係が磁場になっていたからであろう。
15.鳥人戦隊ジェットマン(1991)

女戦士が女エリアから初めて離脱を果たす。女二人のキャラを描き分ける手法を、ここにおいて戦隊シリーズはようやっと完全に手に入れたと言っていい。特殊な設定を設けなくても。
16.恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)

オーソドックススタイルである。しかしやっと女二人を描き分ける手法を手に入れたというのに、ここでまた女一人路線が続く。
17.五星戦隊ダイレンジャー(1993)

リーダーの定められていない戦隊であるが、道士がいなくなってしまった時、やはり誰かが中心にならざるをえず、とするとやっぱりその役目を担うのは赤になる。そのテキパキとした指示に、なんやかんやいいながら結局は皆従っていた。
18.忍者戦隊カクレンジャー(1994)

赤以外がリーダーであると作中で言明された初の作品であるが、そのサスケが歴代でも屈指のリーダーシップの持ち主というのが妙味。史上初の女性リーダー鶴姫は、出身からして他の四人とは別格という設定だったのだが、女エリアの引力は強かった。
19.超力戦隊オーレンジャー(1995)

〈準〉が空席なのは、参謀長の存在感が大きすぎて、チーム内の対立・葛藤が生むドラマの必要がなくなったからである。紅二点復活だが、せっかく女二人のキャラ分けのやり方のコツを戦隊シリーズはつかんだはずなのに、また元に戻ってしまったような感がある。
20.激走戦隊カーレンジャー(1996)

元々仲の良かった者同士によって結成された戦隊は、どうしても対立や葛藤が大きなものにならない。その上、意外に恭介にリーダーシップがある。女二人の描き分け方は、以後安定しパターン化してゆく。
21.電磁戦隊メガレンジャー(1997)

名目上のリーダーは耕一郎だが、リーダーらしく振舞おうとすればするほど空回りしてしまうという、それはそれで面白い役であった。健太は馬鹿やってる印象も強いが、決めるべきところでは決める。レッドの伝統の重みというものか。
22.星獣戦隊ギンガマン(1998)

心やさしいゴウキに、未熟なヒカル。〈緊〉も〈弛〉もガッチリと男に押さえられ、サヤは消去法で女エリアに押し込まれたような印象を受ける。特に女らしくしようとしていたわけでもなく。
23.救急戦隊ゴーゴーファイブ(1999)

男は上の二人が兄的、下の二人が弟的。そして女は一人である以上、姉の役目も妹の役目も一人で引き受けさせられるのは当然の成り行きとして、消去法とかではなく、それを進んで引き受けたヒロインはこの時期としては珍しい部類に属する。
24.未来戦隊タイムレンジャー(2000)

特に誰かをリーダーと決めているわけではないが、チームを牽引する役割を果たしていたのは誰かと言われれば間違いなく竜也である。五人戦隊の紅一点で、女エリアに入らなかったのは史上初。これはユウリにキャリアがあったというだけでは説明しきれない。
25.百獣戦隊ガオレンジャー(2001)

五人の配置自体はオーソドックスではあるが、イエローの〈準〉といいブラックの〈弛〉といい、色と役割の組み合わせに関しては、かなり冒険した作品であった。
以下調査中