戦隊における人間関係と呼称

(最終更新 2010.5.18)

 姓で呼ぶか名で呼ぶか、あるいはコードネームを使うのか。「さん」付けか「くん」付けか呼び捨てか。人間が人間の名前を呼ぶときに、どういう呼称を使うのかは、その二人の人間関係を知る最も有力な手がかりとなる。
 この項では、戦隊シリーズの各作品においてメンバーがお互いどういう呼称を使っているかについて調べた。チーム内の人間関係、つまりリーダーシップのありようや男女の関係などが、シリーズの歴史においてどのような描かれ方をしてきたのかを知るための材料にろう。
 同じ人間の間でありながら複数の種類の呼称が使われることかある。次の二つの場合については、網羅するようにつとめた。
 (1)人間関係が時とともに変化し、それに応じて呼称も変化した場合。(ただしあまりにも短期間しか使われなかったものは省略した。)
 (2)平時のくつろいでいるときと、事件が発生して調査しているときというふうに、緊張感の有無によって使い分けがなされている場合。(もう一つ、戦闘中というのもある。しかしほとんどの戦隊では、戦闘中もしくは開始寸前の状態では普段の人間関係から離脱しコードネームで呼び合うことが多く、それらについては記載を省略した。よく「変身すると呼称が変わる」と思われているが、正確ではない。変身しなくても臨戦態勢に入った時点で呼称は変わっているのである。)
 以上の二つのケースについてはできるだけ把握するようにつとめたが、それ以外の、イレギュラーな呼称であることが明白である場合は取り扱わなかった。例を挙げると、普段はコードネームを使っている戦隊は、身内以外の者がそばにいる場合には姓名を使う(みだりに正体を明らかにしない)。また一時的な感情や冗談で普段とは違う呼称が使われる場合、あるいは単に設定が固まらずスタッフの意思統一がなされないまま撮影が開始されたと思われる場合など。

 表は左が呼ぶ側、上が呼ばれる側である。

1.秘密戦隊ゴレンジャー(1975)

 
新命大ちゃん/大五郎ペギー明日香
海城大ちゃん/大五郎ペギー明日香
海城どん/
海城さん
新命どん/
新命さん
ペギー明日香
海城さん新命さん大ちゃん明日香
海城さん新命さん大ちゃんペギー
 キレンジャーの初代と二代目はスラッシュで分けた。
 初期戦隊における呼称の二大原則はすでに『ゴレンジャー』で完成している。つまり
  (1)目上相手にはさん付け、対等・目下相手には呼び捨て
  (2)男は姓、女は名
 キレンジャーのみ「大ちゃん」というニックネームが用いられているが、これを対等・目下用の呼称と考えれば、「二強三弱」というチーム内人間関係が呼称に如実に反映されているのが分かる。
 「二強三弱」は以後の戦隊シリーズにおける基本フォーマットとなっていく。

2.ジャッカー電撃隊(1977)

 男相手には「エース」「ジャック」「キング」とコード、女にのみ「カレン」と名。
 全員呼び捨て。キング→カレンのみ「カレン」「カレンさん」が混在。おそらくは緊張感の有・無。

3.バトルフィーバーJ(1979)

 男相手には「ジャパン」「フランス」「コサック」「ケニア」とコード、女には「ダイアン」「マリア」と名。
 全員呼び捨て。例外はない。

4.電子戦隊デンジマン(1980)

 男→男は姓・呼び捨て(「赤城」「青梅」「黄山」「緑川」)が多いがコード(「レッド」「ブルー」「イエロー」「グリーン」)も併用されている。
 男→女は名・呼び捨て(「あきら」)が圧倒的に多い。たまにコード(「ピンク」)が使われる。
 女→男は逆にコードが多い。姓・さん付け(「赤城さん」など)もある。
 コードと姓名の使い分けに、明確な規則はなく、適当に併用しているように思われる。ただし男四人の関係がまったく対等なのに対して、男女間の非対称性は明瞭に傾向として存在している。
 ちなみに青梅→あきら「あきらちゃん」、あきら→緑川「達也さん」、緑川→青梅「大五郎」がそれぞれ一話ずつある。

5.太陽戦隊サンバルカン(1981)

 これもコード(「イーグル」「シャーク」「パンサー」)と姓・呼び捨て(「大鷲」「飛羽」「鮫島」「豹」)が混在している。使い分けについてはよく分からない。
 この戦隊は、長官の存在感が大きすぎたため三人の戦士どうしの関係性がほとんど描かれなかった。名前を呼び合うシーンすらほとんどないという有様である。

6.大戦隊ゴーグルファイブ(1982)

 上下関係は、赤間=黒田>黄島>青山>ミキ。
 『ゴレンジャー』の二大原則に回帰した格好。二強三弱も引き継いでいる。
 戦士ナンバーは青山が3で黄島が4なのだが、序列が逆転している。

7.科学戦隊ダイナマン(1983)

 
星川南郷レイ
南郷レイ・レイちゃん
弾さん竜さん南郷レイ
弾さん竜さんレイ・レイちゃん
弾さん星川さん島さん南郷さん
 弾=星川>島=南郷>レイ。
 男であるにもかかわらず星川が名で呼ばれたりするなど、二大原則からの離脱が目立ち始める。
 「レイ」・「レイちゃん」の使い分けは恐らく緊張感の有・無と思われる。サンプル数が少ないので断定するわけにもいかないが。

8.超電子バイオマン(1984)

 
高杉南原ミカ/ジュンひかる
南原ミカ/ジュンひかる
郷さん真吾ミカ/ジュンひかる
郷さん真吾くん南原くんひかる
郷さん真吾くん南原さんミカ/ジュン
 イエローは初代も二代目も同じ。
 高杉が唯一リーダーの郷を呼び捨てにすることが許されているのは、二強三弱の伝統を意識した設定なのであろうが、しかし当人は残りの三人からは敬意をこめた呼び方を全然されていなかったから、ちぐはぐな印象だけが残ることになった。自分をサブリーダーだと勘違いしている奴のようにすら見える。
 初の紅二点戦隊であり、新しいヒロイン像の創出が望まれた作品ではあったはずだが、さん付けをくん付けに改めた程度で一体何ができると思ったのだろうか。

9.電撃戦隊チェンジマン(1985)

 上下関係は剣=疾風=大空>さやか=麻衣。
 二大原則に則ってはいるが、リーダーを呼び捨てにする者がついに二人になる。呼称の上では二強三弱は終わりを告げ、リーダーシップの意味するものも本作を境に変わっていく。
 男どうし・女どうしの間の序列がなくなる一方、唯一残された男女間の序列がやたらと目立つ結果になってしまった。よっぽど親しくない限り女は男相手に名で呼び捨てにしたりしないという、通常の日本語の習慣に従っただけではあるのだけれども。

10.超新星フラッシュマン(1986)

 「ジン」「ダイ」「ブン」「サラ」「ルー」と、全員の全員相手の呼称が本作で初めて名・呼び捨てで統一される。
 本作以降、チーム内での目上・目下の関係性は消える方向に進んでいく。

11.光戦隊マスクマン(1987)

 「タケル」「ケンタ」「アキラ」「ハルカ」「モモコ」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

12.超獣戦隊ライブマン(1988)

 勇介=丈=めぐみ>鉄也=純一。
 ただし純一→鉄也は「鉄ちゃん」。
 呼称統一が継続。ただし途中で戦士の追加があり、新入りは先輩をさん付け。

13.高速戦隊ターボレンジャー(1989)

 「力」「大地」「洋平」「俊介」「はるな」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

14.地球戦隊ファイブマン(1990)

 
数美文矢レミ
兄貴数美文矢レミ
兄さん兄さん文矢レミ
兄貴兄貴姉さんレミ
兄貴兄貴姉さん文矢
 誰を指しているのか明瞭にする必要がある場合は「○○兄さん」「○○兄貴」「数美姉さん」のように名前を上につける。
 序列復活。すべて年齢順。ただし文矢とレミは双子で、どっちが第四子でどっちが第五子という設定はない。
 数美だけ(呼ぶほうも呼ばれるほうも)特別な呼称が使用されている。
 ちなみに、戦士ナンバーは赤青黒桃黄と、長男次男三男長女次女の順になっているが、作中で文矢が数美より目上扱いされたことなど一度もない。なぜ素直に長幼の順にナンバーを振らなかったのだろう?

15.鳥人戦隊ジェットマン(1991)

 赤 黒 
雷太アコ
雷太アコ
香さんアコさん
雷太さんアコさん
雷太→雷ちゃん
 「雷太→雷ちゃん」は、途中で親密さの度合いが増したからのように思われる。
 目上・目下といった直線的な関係ではなく、個別の親疎関係が反映された呼称を使用する初の戦隊となった。

16.恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)

 「ゲキ」「ゴウシ」「ダン」「ボーイ」「メイ」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

17.五星戦隊ダイレンジャー(1993)

 「亮」「大五」「将児」「知」「リン」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

18.忍者戦隊カクレンジャー(1994)

 「サスケ」「鶴姫」「セイカイ」「サイゾウ」「ジライヤ」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。
 ただし厳密なことを言えば、「鶴姫」というのはそもそも何なのか。名でもなければ姓でもなく、代々妖怪退治のリーダーをつとめる鶴姫家で伝えられてきた、コードネームの一種と考えるのが一番つじつまがあうらしいのだが……。他のメンバーが彼女を「鶴姫」と呼ぶときに、リーダーとしての敬意をこめて呼んでいるのかそうでないのか、ちょっと判断がつきかねる。

19.超力戦隊オーレンジャー(1995)

 レッドのみ「隊長」と呼ばれる。他の4人は「昌平」「裕司」「樹里」「桃」と、名・呼び捨てで統一。
 隊長と呼ぶ規則になっているから隊長と呼んでいるのであって、敬意が含まれているかどうかはまた別の話。

20.激走戦隊カーレンジャー(1996)

 直樹のみ名・さん付けで他を呼ぶ。これは当人の性格によるものであって、他のメンバーと距離を置いているわけではない。
 その他は「恭介」「直樹」「実」「菜摘」「洋子」と、名・呼び捨てで統一される。

21.電磁戦隊メガレンジャー(1997)

 「健太」「耕一郎」「瞬」「千里」「みく」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

22.星獣戦隊ギンガマン(1998)

 「リョウマ」「ハヤテ」「ゴウキ」「ヒカル」「サヤ」と、と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

23.救急戦隊ゴーゴーファイブ(1999)

対目上対目下
-○○
(呼び捨て)
○○兄さん兄さん
○○兄(にい)-
○○兄さん兄さん
○○兄ちゃんお兄ちゃん-
 誰を指しているのか明瞭にする必要がある場合とそうでない場合に分けて示した。○○には「マトイ」「ナガレ」「ショウ」「ダイモン」「マツリ」が入る。
 長幼に基づいた直線的序列である。

24.未来戦隊タイムレンジャー(2000)

 シオンのみ名・さん付けで他を呼ぶ。これは当人の性格によるものであって、他のメンバーと距離を置いているわけではない。
 その他は「竜也」「ユウリ」「アヤセ」「ドモン」「シオン」と、名・呼び捨てで統一される。

25.百獣戦隊ガオレンジャー(2001)

 「レッド」「イエロー」「ブルー」「ブラック」「ホワイト」と、と、全員の全員相手の呼称がコードで統一される。

26.忍風戦隊ハリケンジャー(2002)

 「鷹介」「七海」「吼太」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

27.爆竜戦隊アバレンジャー(2003)

らんるちゃん三条さん
凌駕さん幸人さん
凌駕らんる
 目上目下というより、各人の態度の大きさを反映しているだけのようにみえる。

30.轟轟戦隊ボウケンジャー(2006)

さくら蒼太真墨菜月
チーフ蒼太くん真墨菜月さん→菜月
チーフさくらさん真墨菜月ちゃん
明石さくら姉さん蒼太菜月
チーフさくらさん蒼太さん真墨
 「平時&調査中/戦闘中」で呼称を使い分けている戦隊は多いが、本作では「平時/調査中&戦闘中」で分けられている。表にしたのは平時で、普段の個別の人間関係を反映したものになっている。
 調査中&戦闘中(作中では「ミッション中」)の呼称は独特のものである。原則コードネームであるが、明石に対してだけは特別に「レッド」ではなく「チーフ」という呼称を用いるという規則になっている。もっともメンバーの間で全然習慣化しておらず、つい姓名で呼んではそのたびに注意を受けたりする。規則をあえて無視するメンバーさえいた。

31.獣拳戦隊ゲキレンジャー(2007)

 「ジャン」「レツ」「ラン」と、全員の全員相手の呼称が名・呼び捨てで統一される。

以下調査中