戦隊シリーズにおける戦士の名前の由来

(最終更新 2015.3.23)

 毎年一月になると、新しい戦隊が発表になる。そして当分の間、戦士の名前に何か法則が隠されているのではないかという話題で持ちきりになる。イニシャルをつなげて何か意味のある文字が浮かび上がってこないかとか、元ネタがないかとか。
 こういうのは、みんなでワイワイと議論をしている間が一番楽しい。そしてその結果として、法則が見つかったり、あるいは何も意味がないということが判明し、楽しい一年間が過ぎる。そしてその後はまた次の新戦隊の話題に夢中になるのである。それまでの議論を記録に残そうとすることもなく。
 それを記録に残したのが本稿である。
 こういう言葉遊びは、あまり凝り過ぎるとかえって安っぽくなる。音の響き・字面・表面上の意味を普通に重視し、かっこいいキャラにはかっこいい名前を、かわいいキャラにはかわいい名前をと工夫するのが本則であろう。そしてさりげなく深い意味を仕込んでおくのが好ましい。言葉遊びをしたいがために、キャラクターにピッタリでない名前を付けてしまうなど論外である。
 番組が終了してから五年くらい経ったある日、「あ、そういう意味だったのか!」と気づいて膝を打つことがある。そういう喜びこそ、ファン冥利に尽きるというものである。

1.秘密戦隊ゴレンジャー(1975)

 一番初めの文字をつなげれば「かしおぺあ」。二代目キだけは法則の範囲外で、再交代は最初から決まっていたということが、名前からも分かる。モモは歌手のペギー葉山からとったのであろう。
 最初からモモには外人っぽい人のキャスティングを考えて企画を練っていたらしく、言葉遊びをせんがために苦しくなった、ということではないらしい。

2.ジャッカー電撃隊(1977)

 ダイヤジャックはおそらく「東方青龍」から(まあ五行説における「青」は実はグリーンの意味なのだが)。クローバーキングはキレンジャーの後継キャラっぽい姓名。「緑の大地」という意味も持たせたかったと思われる。あとは意味はなさそう。

3.バトルフィーバーJ(1979)

 ダイアン・マーチンは役者の芸名から。

4.電子戦隊デンジマン(1980)

 『ゴレンジャー』以降試行錯誤が続いたスーパー戦隊シリーズにおいて、「色で区別される戦士」というフォーマットを確立した作品にふさわしいネーミング。苗字に色の名前がついている。「オーメ」は耳から聞く分には分かりにくい。
 「あきら」は役者の芸名から。

5.太陽戦隊サンバルカン(1981)

 姓がそのまま動物の名前(イーグルの途中交代で二代目の姓が統一性を乱すことに)。
 名は全員役者の芸名そのまま。そもそも下の名なんて劇中では全然出てこないから、適当な決め方をしたところで大して問題もない。

6.大戦隊ゴーグルファイブ(1982)

 姓が「色」、名が「キャラクターの特徴」を表わしている。
 子供にとっての分かりやすさを最大限に重視した作風にふさわしい。ただし作品のテーマである「未来科学」がピンクの名前に託されていることだけは、見逃した人も多かったと思われる。

7.科学戦隊ダイナマン(1983)

 五人とも発明家としての専門分野と、出身地の設定があるが、どっちが姓でどっちが名に関連づけたものになっているのかもまちまち。「立花」は武器「ローズサーベル」を表わしているようにも思えるが、だとするとますます統一性がなくなる。
 戦隊シリーズがリアリズム志向へと舵を切る、その過渡期の作品であるということが戦士の名前に反映されている。

8.超電子バイオマン(1984)

 リアリズムを重視した作品にふさわしく、言葉遊びのいっさいを排するつもりだったのであろう。しかし二代目イエローだけが武器のバイオアローのひっかけになっていて、タレントの風吹ジュンのもじりみたいな名前にしたのは、統一性を欠くことになったのではないか。

9.電撃戦隊チェンジマン(1985)

 当時は男は姓で、女は名で呼ばれるのが普通であったから、普段使用しない部分で遊びを入れようとしたと思われ、それぞれの伝説獣を連想させるような言葉が入っている。(ペガサスのみ姓名両方。)
 「剣」「大空」「翼」といい、剣の野球部員時代の決め球の名前「ドラゴンボール」とといい、なにやら当時絶頂期を迎えていた少年ジャンプとの関連性が気になるが、連載開始時期を調べてみたら、単なる偶然と思われる。
 ちなみに「麻衣」は役者の芸名からとったのではなく、その逆。ヒロインを演じる二人が両方とも「ひろこ」では色々具合が悪く、片方が改名することになり、キャラ名から芸名をとった。戦隊史上唯一のケース。

10.超新星フラッシュマン(1986)

 音感優先で言葉遊びはなさそう。
 宇宙で育ったという設定ゆえ、姓はない。

11.光戦隊マスクマン(1987)

 モモコが色の名前を表わしているという以外、意味はなさそう。

12.超獣戦隊ライブマン(1988)

 初期の三人の苗字がそれぞれ「空」「陸」「海」を連想させる。
 二人を追加するというのは途中で決まったことであり、黒・緑はそれぞれ第一話で端役として登場した矢野卓二・相川真理の弟という設定であるがため、姓に凝ることもできず、統一性もなくなってしまった。
 めぐみは役者の芸名「恵」から。こっちは漢字。

13.高速戦隊ターボレンジャー(1989)

 炎だから赤色、浜→海だから青色、日野→太陽だから黄色、というふうに姓が色を表わしているようにも思われるが、そうすると山形大地はひょっとしてグリーンターボだったはずが直前で変更させられたのではないか、と想像は広がる。
 ブルーだけは名も青色。だとしてもピンクについてはよく分からない。

14.地球戦隊ファイブマン(1990)

 全員が教師という設定ゆえ、教科を連想させるような名前になっている。「レミ」はおそらく「ドレミ」から(「シドン星というのも、有名ななぞなぞ「空の上には何がある?」「シドがある」から来たと思われる)。
 レッドは「理(おさむ)」でもよかったような気もするが、長兄として別格の存在にしたかったのであろう。すべての教科を包含するような名前になっている。

15.鳥人戦隊ジェットマン(1991)

 イエローが初代キレンジャーを意識して造型されたキャラだということを姓名が示唆。戦隊シリーズでは太った奴には「太」という文字をつけなければならないという規則があるようだ。またホワイトの姓が上流階級のお嬢様であることを匂わす。

16.恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)

 ゲキが「激」、ボーイは英語で「少年」……というような考察も可能だが、深い意味はなさそう。

17.五星戦隊ダイレンジャー(1993)

 設定は明らかに『水滸伝』モチーフなんだが、なぜか作中の固有名詞は『三国志』由来が多いという不思議な作品。亮といったら独火星・孔亮なのか諸葛亮(孔明)なのか、どっちなんだろう。というか、そもそも孔亮じたいが諸葛亮のもじりなのであって……。
 「知」と書いて「カズ」と読ませるところから、これはサッカー選手である三浦知良からとったような気もする。この年Jリーグ開幕。

18.忍者戦隊カクレンジャー(1994)

 男の四人は江戸時代の読本などで有名な忍者の子孫という設定で、名前もそのまま。
 史実・伝説を問わず名のある女の忍者が活躍したという例はなく、鶴姫のみ完全オリジナルとなっている。元ネタとおぼしき女武将も何人か挙げられてはいるが、なにしろ中世ではありふれた名前で決め手に欠ける。
 「鶴」を音読みすれば「カク」であり、カクレンジャーという名前と引っかけてあるとも考えられる。

19.超力戦隊オーレンジャー(1995)

 姓の一番目の文字がマスクのゴーグルの形と一致。
 名は「桃」が色を表わしている以外は意味はなさそう。

20.激走戦隊カーレンジャー(1996)

 姓の一番初めの文字をつなげると「じどうしや」。

21.電磁戦隊メガレンジャー(1997)

 ローマ字書きにして一番初めの文字をつなげると「DENJI」。
 みくというのは、少女マンガや少女小説におけるヒロインの名前の定番であるが、あれは久美沙織氏(『丘の家のミッキー』の作者)によると、漢字で書けば未来、未だ来らず、つまり現時点ではあまりパッとしない女の子、という意味らしい(だからこそ読者の感情移入も得やすい)。
 桂正和『ウイングマン』(1983年)といえば特撮ヒーロー物のネタの大量投入で有名だが、学生ヒーローである主人公の名前が健太、ヒロイン(の一人)が美紅(みく)。メガレンジャーがここから名前をとったのであれば、円環になってつながったことになる。

22.星獣戦隊ギンガマン(1998)

 リョウマはおそらく馬(ギンガマンの移動手段)と関係づけられた名前。疾風が風の戦士、光が雷の戦士、あとの二人はよく分からない。

23.救急戦隊ゴーゴーファイブ(1999)

 江戸時代の火消しに関係のある用語で統一したらしいが、しかし流水と書いて「ナガレ」と読ませるとは、この由来は分かりにくすぎる。放映当時、東映公式サイトで種明かしをやることになったのも、そのせいであろう(現在は削除)。

24.未来戦隊タイムレンジャー(2000)

 TATSUYA、AYASE、SHION、DOMON、YUURIの3文字目をつなげるとTAIMUになる。
 ファンの間では知られた説だが、これだけではただの偶然という可能性もある。しかしこの五人の順番は、タイムジェットやボルテックバズーカに記された数字に従ったものである。

25.百獣戦隊ガオレンジャー(2001)

 姓は動物の名前から。名はその動物から連想されるもの。とはいうものの、「走」なんて獣すべてがそうだし鷲は平原にだって生息するから、特にその動物の特徴を表わしているというものでもない。
 ホワイトは大河→タイガーと英語を経ていることといい、牙に部首をくっつけていることといい、パターンが一人だけ異なる。

26.忍風戦隊ハリケンジャー(2002)

 姓の一文字目をつなげると「しのび」、名はそれぞれの動物を連想させる文字が入っている。

27.爆竜戦隊アバレンジャー(2003)

 中生代の地質時代の名前から。
 なんで女の子に「襤褸=ボロ布」などという名前をつけるのかと不審に思われることの多いイエローだが、いつもウェスを持ち歩いているメカフェチ少女にふさわしい名前と言われれば納得できないこともない。

28.特捜戦隊デカレンジャー(2004)

 秋田県の民話「ちょうふく山のやまんば」には「あかざばんば」という登場人物が存在する。これが起点になっているのは、まず間違いないところであろう。しかしなぜ秋田県なのだろうか(愛知県なら分かるが)。
 姓は有名な探偵小説作家から。「赤座」が赤、「礼紋」がレモン→黄というふうに、色を連想させるというのは二人だけ。
 名はお茶の名前から。茉莉花(まつりか)はジャスミンの別名。ブルーを除く4人はお茶の色と関係を持たせているようにも思われる(さすがに青色をしたお茶はないか)。
 グリーンの姓名は俳優のえなりかずきとプロ野球の星野仙一からとられたという説があるが、それは演じた役者の人が「その二人を意識する名前である」と言っただけのこと。

29.魔法戦隊マジレンジャー(2005)

 五人の名前の最初の文字をつなげて「ま・ほ・う・つ・かい」。姓の「おづ」も入れれば「オズの魔法使い」。
 蒔人=種まき、が「植物魔術」を連想させるという以外は名前に意味はなさそう。
 深雪お母さんは昔同人誌をやっていて、次男もサッカー少年にするつもりがハマったのは三男だった……などということを想像したくなる名前ではある。

30.轟轟戦隊ボウケンジャー(2006)

 姓は有名な探検家や冒険家から、名は色を連想させる。
 レッドは姓に色の名前「あか」も含み、「明石焼き」と字面が似ている……って関係ないか。

31.獣拳戦隊ゲキレンジャー(2007)

 三人の苗字の第一音節をつなげると「かん・ふ・う」。
 レッドは「感動じゃん!」から。三人の名前をつなげると「Let's run & jump!」、ジャンは追加メンバーの久津ケンと合わせて「じゃんけん」、レツは兄のゴウと合わせて「レッツゴー」という意味も込められているようでもある。

32.炎神戦隊ゴーオンジャー(2008)

 五人の苗字の最初の文字をつなげると「えころじい」。
 名前の漢字の構成要素に「車」が使われている。
 ブラックは石原プロからつけたのか?

33.侍戦隊シンケンジャー(2009)

 水のモヂカラだから、さんずいへんの漢字が三つも並んでいるのだな、という程度のことはすぐに分かるが、他はあまり隠された意味はなさそう。

34.天装戦隊ゴセイジャー(2010)

 各人のローマ字表記は公式に定められている(プレミア発表会でのポスターに記載されていたらしい)。アグリカルチャー(農業)、ハイドロ(水)から来ているのは確定的として、他の三人も、種族と関係していると推察される。しかしここまでヒントがそろっているというのに、決定打が出ないとは……。

35.海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)

 脚本家自身が言明しているのだから、ブルーとグリーンは確定(だったら全部明らかにしてくれればいいのに……)。Marvelousは「すばらしい」という意味の英語でこれも確定的。だが残りの二人はなんだろうか。Familleはフランス語で「家族」、deもフランス人の貴族を示す接頭辞、しかしAhimなんてフランス語はない。Luka Millfyに至っては見当もつかない。菓子のミルフィーユもフランス語だが、mille-feuilleという綴りとはさほど似てもいない。ちなみに全員の名前のローマ字綴りは劇中に出てくる。

36.特命戦隊ゴーバスターズ(2012)

 イエローの相棒がウサギ型。

37.獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)

 姓の最初の文字をつなげると「きようりゆ」、名の最初の文字をつなげると「だいのそあ」(英語で恐竜の意)。
 レッドの姓名が「恐竜」「ダイノ」に似た音であるところから、一人だけ特別という雰囲気が漂ってくる。ブラックはイアン・マルカムに由来(これは公式言明)。ブルーは働き者、グリーンは剣の達人でソウジと来れば沖田総司が由来なのは確定的。

38.烈車戦隊トッキュウジャー(2014)

 全員が実在の列車に由来すること、およびトカッチに関しては東映公式言明。
 JRの夜行列車は「ムーンライト」「スターライト」「トワイライト」等の名前がついている。しかしライトのローマ字表記が Light でも Raito でもなく Right なのは何故だ。「神楽号」「神楽列車」という名前がつく列車は日本各地にあるが、イベント用の臨時とかではなく、通常の営業として運行されたのは高千穂鉄道のみ。

39.手裏剣戦隊ニンニンジャー(2015)

 姓は実在した有名な忍者、名は自然現象。ただし松尾芭蕉忍者説はあくまでも仮説。蔵人(くろうど、くらんど)は忍者にはよくある名前。ちなみにクラウドは英語で「雲」の意味。
 百地の「もも」は桃色に通じる。また女二人は役者の芸名からとったような感じもする(風花←優花、霞←花純)。ただ桃役の人は「全くの偶然」とは言ってはいるが……。