第1章 ペギー松山
(最終更新 2014.11.27)

1975年 『秘密戦隊ゴレンジャー』
ペギー松山(モモレンジャー)
出演 小牧りさ(第1・2話のみテロップは「リサ」)
【設定】
[所属] 国際秘密防衛機構イーグル(世界規模の軍組織)。
[敵] 黒十字軍。人類絶滅をもくろむ仮面怪人軍団。世界各地で戦線を展開している。
[前歴] イーグル日本ブロック北海道支部の隊員。
[経緯] イーグル日本ブロックの全国の支部が黒十字軍の奇襲を受け壊滅状態に陥った際、北海道支部ではただ一人生き残った隊員。生き残った隊員は全国で五人だけであり、彼らをかきあつめて新部隊を結成することが決定され、彼女は東京から招集を受ける。
[能力] 軍人として鍛えられた技能や経験。ゴレンジャースーツを着用するためには、十万ボルト(のちに改良されて十五万ボルト)の高圧電流に耐えるだけの高度な精神集中力が必要。
[特技] 爆弾など武器やメカの製作。
[日常] 専業。
[その他] スイス人の父と日本人の母を持つハーフ、という設定が広く知られているが、出自や家族に関する情報は劇中に一度も出てきていない。「ペギー松山」という名前には確かにそれらしいが、実際に演じた女優にそのような雰囲気は皆無。
【解説】
第40話ではペギーは鉄カゴ仮面の催眠洗脳攻撃を受け、変身不能に陥る。檻の中に閉じ込められ、炎の中でもがき苦しむペギー。その絶体絶命のピンチに、駆けつける男たち四人。
そこに続くシーンこそが恐らく、以後三十年以上にわたって続く戦隊ヒロインの、方向性を決定づけることになったのであろう。
檻を壊し、彼女を救出することなど造作もないことであった。しかし四人はそうしなかった。檻の外側から彼女の名を叫び、彼女が変身能力を取り戻すよう必死に励まし続けたのである。
全員が力を合わせて戦うこと、これが戦隊シリーズの原点である。だから一人一人は弱くても構わないんだ――とは言い切れない部分はある。マニュアルに載っていない想定外の事態は常に起こりうるし、そこは個人としての力を頼りにせざるをえない。ペギーが変身能力を取り戻すためには、自分一人の力で乗り切るしかなかったのである。
戦隊シリーズにおいては基本的に、戦士は普通の人間である。変身というのも「強化スーツ」という装備を身に付けることを意味し、それも着用した人間の体力を何割かアップさせるという程度の性能しか持たない。そうである以上、女であるモモは仲間の男たちに比べて戦闘能力で大きく劣る。体格・筋力には性差というものがあり、強化スーツはその差を縮めるものではないからだ。
そんな彼女が、男と同等の使命と責任を負って戦う。それは仲間の男たちに比べてずっと辛くて苦しい戦いではあっただろう。黒十字軍にとって彼女は明らかに「鎖の最も弱い環」であった。集中的に狙われ、絶体絶命のピンチに陥ったのも、一度や二度ではない。しかし彼女は倒されるたびに傷ついた体を引きずって立ち上がり、時には仲間に助けられながら、時には自分一人の力で、弱音をはくことなく戦い抜いた。そんな彼女の姿に、視聴者は心を奪われていったのである。戦いを通じて彼女もまた成長していった。終盤には、敵の怪人との一騎打ちを任されたり、仲間の男たちのピンチを救ったりするような活躍も見せるようになっていった。
彼女の命がけの戦いが証明してみせたことは、戦士にとって女であるということは致命的なマイナスではない、ということである。ただマイナスであることに違いはない。彼女がゴレンジャーに指名されたのも、他に仕方がなかったからに過ぎない。
イーグルには007・加藤陽子という秘密連絡員がいる(演・鹿沼えり)。諜報が本業だが、他にもゴレンジャー基地で負傷者に包帯を巻いたりコーヒーをいれたりしていた。男の戦いをサポートするという、伝統的なヒロインの役目を背負う存在は他にちゃんといた。にもかかわらず、ペギーもまた陽子と二人で包帯を巻いたりしていた。仲間の男たちに安らぎを与えるという、職場の花としての役割を、ペギーもまた免除されていたわけではない。それが女にとっての本来の仕事なのだから。
では、戦士にとって女であることが全くマイナスとならない状況というのは、絶対にありえないのであろうか? それが、彼女がやり残し、後輩たちに託した恐らく唯一の課題であった。その答えは七年先に示されることになる。
【メイン回】
上原正三/竹本弘一
4 紅のキック!砕けミクロ大作戦 〔上原/山田〕
変装して菌類研究所に乗り込むペギー。
16 白い怪奇!鏡の中の目 〔上原/竹本(弘)〕
黒十字軍による分断作戦。ペギーは集中攻撃を受け倒れる。
40 紅の復讐鬼!地獄のモモレンジャー 〔上原/田口〕
捕われたペギーは洗脳催眠を受け変身不能に。
45 暗黒の剣鮫!海の殺し屋襲来 〔上原/山田〕
石油基地の襲撃者を捕捉すべく、ペギーは囮になる。
57 黒い包囲網!五つの顔のペギー 〔曽田/山田〕
黒十字軍支配下の市から脱出すべく次々と変装するペギー。
68 ピンクの反乱!! 針・針・針の大攻撃 〔高久・新井/小西〕
イーグル基地の不審な全滅。ペギーは陽子とともに敵地に乗り込む。
77 黒い恐怖!! 吸血へび女 〔上原/田口〕
吸血怪事件が続発する村に調査に赴くペギー。
82 黒い魔術師!! 人形館の怪?! 〔曽田/田口〕
ペギーとの接触に失敗した諜報部員003は殺される。
83 オレンジ色の初恋!! 吼える大都会 〔上原/田口〕
ペギーは死んだはずのかつての上官と再会する。
『ゴレンジャー』の場合、個人メインかそうでないか判断しかねる回が多い。メイン回だと断言できないが、ペギーの出番の目立った回も、以下に挙げる。
7 ピンクの月光!オオカミ部隊 〔上原/山田〕
10 赤い風船!風速100メートル 〔上原/折田〕
17 むらさき色の遊園地!悪魔の墓場 〔高久・新井/山田〕
25 真赤な導火線!八ツ目の魚雷攻撃 〔高久・新井/田口〕
49 みどりの大脱走!卍のトリックプレイ 〔曽田/田口〕
61 桃色のKOパンチ!エンドボール勝負 〔曽田/山田〕
80 真赤な敵中横断!希望への脱出 〔曽田/山田〕